感想:「データを武器にする - 勝つための統計学」(渡辺 啓太)

データ分析のための書籍感想[002]


「データを武器にする - 勝つための統計学」
著者:渡辺 啓太
出版:ダイヤモンド社

一言で言うと、”納得させるためのノウハウ本”


女子バレーボールチームをロンドン五輪で銅メダルに導いた「情報戦略担当アナリスト」によるデータ活用のための指南書。「統計学」とありますが、統計学が何かを多少とも把握している人はタイトルのこの部分は無視して読まなくてはいけません。また、データ分析の手法てきな紹介もほとんどありません。超一流のスポーツ選手という、特殊なキャラクターに対して、データを元にした説明・指導等をいかに行っていくかということを通して、自分の知見を相手に伝えるノウハウを書き起こした書籍です。

例えば、相手の悪いところを説明する場合は、良いところ、悪いところ、良いところ、のサンドイッチで説明せよ。などのように、データや統計とは関係の薄い部分も多くみられる書籍です。データ分析に興味があって自分の技術を磨きたいと考えているような読者は想定していません。データ分析の実例として一番大きく取り上げられているが、選手のプレイシーンを編集したモチベーションアップビデオというあたりも、仮説検定とか手法の正しさとかいった言葉とは無縁の書籍である印象を強くしています。

この書籍の面白いところは、やはりスポーツ選手の指導がモチーフの中心にある点です。業務としてデータ分析を行っている者として、自分の分析結果や分析方法を、それらの知識が無い相手にアピールしなければいけない場面は多いと思いますが、そういった時にどうすべきかという事であれば、参考になるノウハウが多く紹介されています。偏見かもしれませんが、スポーツ選手に対して統計手法の説明や分析結果の意味をくどくど説明しても試合結果に影響するようには思われません。説明相手としては相当難易度が高い相手と思いますが、そういった相手に分析レポートを提出するような困難に立ち向かう場合にはこの本のノウハウが役立つかもしれません。

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